うちの会社の倉庫に飾ってあるお宮です。私の手作りです。といっても、作業の安全を祈願して作った、っていう訳じゃないんですよ。まあちょっと聞いて下さい。

もうだいぶ前になりますがね、知り合いが「自分の敷地にあるお宮が古くなったんで、新しいのに替えようと思う」って言ってきたんですよ。うちは300年続く大工の家系でね、この近所にも先祖が作ったお宮とかお寺とかがあるわけです。私もそういうものを修理できるように腕を磨いてきたけど、一から作るっていう注文はなかなかあるもんじゃないですよ。でね、その知り合いから正式に注文をもらう前に、一つ腕試しと思って作ったのがこれなんですよ。

ところが、その知り合いに見せに行ったらね、「仏壇屋に聞いたら、大桃さんの言う値段の半分で作れるって言うから、仏壇屋に頼んだ」と来たもんです。犬小屋じゃあるまいし、そんなに安く作るにはよっぽど手抜きしないと作れないんだがなあ、って思いましたけどね。まあいいですよ、私は楽しい腕試しができたし、行き場を失ったこのお宮は自分の倉庫に飾ればいいし。

で、しばらくしてから知ったんですがね、その仏壇屋が作ったお宮、接着剤が剥がれて哀れな姿になってるんだそうです。ほらね。犬小屋じゃあるまいし、お宮を接着剤で組むなんて、とんでもない手抜きですよ。こんな難しい形はちゃんと「ほぞ接ぎ」しなきゃ持たないです。こういうのを「安物買いの銭失い」って言うんです。

 

この話はね、家づくりにもそっくり当てはまるんですよ。国の基準を満たした接着剤で家を作ったのに、後になってそれが剥がれて、「これは誰の責任なんだ?」って問題になったりとかね。

その一方で、接着剤なんて全然使ってない昔ながらの木造建築が、それこそ法隆寺みたいに1300年もしっかり建ってるわけですよ。

だから、これから家を建てようという人に、これだけはよく分かってもらいたいです。家づくりで「安物買いの銭失い」は後悔しますよ、ってね。

(有)大桃工務店 代表取締役 棟梁 大桃実

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