いやあ、驚きましたね!

はじめていらっしゃった若いお客さんと話を始めたらね、「すぐ隣の集落に住んでる」って言うじゃないですか。しかも「小学校の登下校の時に6年間毎日会社の前を通ってました」って言うんですよ。「急に雨が降ってくると、あの屋根の下で雨宿りしてたんです」ともね。「あの屋根」っていうのは、会社の倉庫に付いてる大きいひさしのことです。

それだけじゃないですよ。その若いお客さんのお父さんも私が知ってる人でしたし、とにかくびっくりですよ。世間は狭いですねえ。

で、家の打ち合わせはそっちのけで、お客さんが小学生だったころの思い出話に花が咲いたわけです。写真はその時の笑顔です。カメラマンもなかなかやりますね。こんな場面を撮られてたなんて、私は気が付かなかったですよ。それとも、話が楽しすぎて気が付かなかっただけかな。

小学校の登下校と言えばね、私が材木を切ったり削ったりしてると、学校帰りの子供たちが興味深そうにじーっと見物して、いつまでも家に帰らない、なんてこともよくありました。いい思い出ですよ。最近はそんなふうに道草を食う子供も少なくなった気がするけど、子供の数が減っただけでしょうかね。

 

大工に限らないですけど、職人っていうと「気難しい」「口数が少ない」なんていうイメージがありますよね。私の弟たちもそうだから、私だって根はそういう性格なのかもしれません。

でもね、私は棟梁としての立場上、お客さんと話をする事がずっと多いわけですよ。打ち合わせはもちろんだけども、特別用事がなくても自分が建てた家に出かけていきます。そうすると、どこの家でも「大桃さん、よう来て下さいました。まあまあ上がってお茶でも」となります。そこで、「どこか傷んで直すところはないですか?」とか、「息子さんもそろそろ家を建てるころですよね?」とか、要するに営業ですよ。仕事を取ってくるのも棟梁の大事な務めですから、自然と口数も多くなるということです。

おかげでね、私は人と話をするのが好きになりましたよ。特に、こういう若い人と話をするのは楽しいですね。「ああ、そんな事を考えてるのか」「そんな風に思うのか」って。視野を広げてくれるっていうかね。

結局、いい家をつくるには、家という箱を作るだけじゃダメです。そこに住む人が何を考えて、どう思うのか、そこに共感できるようでありたいですね。お客さんの漠然とした思いを、家という形あるものに翻訳する。その橋渡しができるのが本物の大工だ、と私は思っています。

(有)大桃工務店 代表取締役 棟梁 大桃実

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