新しい家を作る前の打ち合わせって、楽しいもんですよ。

私ら大工はね、お客さんが「こんな家が欲しい」と言うのを、そのまま「はいはい、分かりました」って受け入れちゃいけないんです。

お客さんは初めて家を作るんだし、それまでに知っている家は自分が育った家くらいでしょ。私のほうはもう半世紀も家を作り続けてるから、お客さんが言うのよりも、もっといい提案ができますよ。

もっといい提案というか、お客さんは頭では「こんな家が」って思っていて、それを口に出すけど、その本当の意味はもっと別の所にあったりするのが、私には分かるんですね。

だから、打ち合わせを重ねるほど、お客さんの頭の中に「ああ、そういうことだったのか」っていう絵が出来上がっていくんですよ。私のほうも、打ち合わせを重ねるほど、お客さんが本当は何を望んでいるのかはっきりしてくるわけです。

夢がだんだん形になっていく、っていう事ですかね。それも、夢がどんどん膨らみながら、素晴らしいものに変わりながら形になっていくんですね。そうやって育て上げた家はもちろん素晴らしいけど、育てる過程の打ち合わせもやっぱり楽しいですよ。

 

それなのにね、ローコスト住宅のチラシなんかに「間取りはたったの3種類から選ぶだけ。面倒な打ち合わせの手間を省けます!」なんて宣伝してるのを見ると、がっかりですよ。

そりゃあ、建てる側にとっては、間取りが3種類しかなければ楽ですよ。注文が来る前からあらかじめ材料を切っておくことだってできるし、いつでもおんなじ作業をするだけなら頭も使いませんからね。

でもね、それで本当にお客さんの幸せにつながるんですかね?

特に今の時代は生き方が多様化してるでしょ。それをたった3種類の間取りに押し込めようとすれば、どうしたって無理が出てきます。「こんなはずじゃなかった」って後悔しながら不便な家に一生住み続けるなんて不幸ですよ。

お客さんの多様化した希望をよく聞いて、その本当の意味をくみ取って精一杯かなえてあげる。「ああ、世界に一つしかない私たち家族専用の特別な家に住めて幸せだなあ」って思ってもらう。それこそが私ら大工の務めだと思うんです。

だからね、「打ち合わせは面倒だ」なんて言わないで、打ち合わせを思いっきり楽しんでください。いい思い出にもなりますよ。

(有)大桃工務店 代表取締役 棟梁 大桃実

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