会社の倉庫の中で撮りました。

私の手のそばにある焦げ茶色のものは「墨壷(すみつぼ)」って言いましてね、長い材木に一発で直線を引ける便利な道具です。こんなふうに曲がりくねった形の墨壷は今ではあんまり見かけないけど、もっと現代風のデザインのものが今でも当たり前に通販でも売ってますよ。大工にとって無くてはならない道具です。

この写真を撮った時にカメラマンが「木の香りが気持ちいいですね」って言ってました。倉庫の中にはいつでも材木が積んであって、私らにとっては当たり前なことなんですけどね。言われてみれば、こんなふうに木に囲まれている仕事って、他にあんまり無いかもしれないですね。

今、いろんなところで木の香りが注目されてるようですよ。防虫効果や除菌効果があるっていうのは昔からけっこう知られていました。それだけじゃなくて、リラックス効果があるっていうことで森林浴が話題になったり、最近では血圧を下げるとか、夜ぐっすり眠れるとか、免疫力が高まるなんていうことまで、ちゃんと実験で証明済みなんだそうですよ。

とすると私ら大工は健康で長生きするっていうことですかね。あなたも木をふんだんに使った家に住めば、健康で長生きできるかもしれませんよ。

 

ところで、日本で「大工」といえば、「木を加工して家を建てる人」というイメージが当たり前ですよね。でもこれは、世界的に見ると、当たり前のことではないんだそうです。ヨーロッパなんて、文化財になるような重要な建物は全部石造りですからね。

ヨーロッパは日本の半分も雨が降らないし、それに私たちが思ってるよりずっと北にあるから涼しいです。だから石造りでもいいんですが、高温多湿の日本で石造りの家なんかに住んだら、すぐに病気になってしまうでしょう。実際そういう理由で、日本の住まいはずいぶん昔に木造に行き着いたらしいですよ。

今、技術の進歩によって、日本でも木造でない住まいがずいぶん増えました。マンションみたいな高層建築はそもそも鉄筋コンクリートじゃないと強度が持たないから当然として、ごく普通の一戸建て住宅にもコンクリートをそのまま室内の壁として見せるデザインが「現代的だ」と話題になったりします。金属やプラスチックを室内にたくさん使ったデザインも「スタイリッシュだ」って言うんだそうですね。

でも、住宅の室内にコンクリートや金属やプラスチックって、どうなんですかね? そりゃ、温度や湿度だけならエアコンでどうにでもできるでしょう。だけど、防虫効果、除菌効果、リラックス効果、血圧を下げる、夜ぐっすり眠れる、免疫力が高まる、なんて期待できませんよね。

私が昔ながらの大工だからって、「何でも昔の方がよかった」なんて言いませんよ。でもね、技術が進歩したからって、「何でも新しいものの方が優れてる」って頭から信じていると、思わぬところで足をすくわれると思うんですよね。

(有)大桃工務店 代表取締役 棟梁 大桃実

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