会社の近所にある神社の鳥居です。私が指さしているところの上と下とで、木の表面の様子が違ってるでしょ?

これはね、私が修理したんですよ。

鳥居っていうのは、まともに雨風が吹き付けるでしょ。どんなに丈夫な木で作っても、特に下の方は長い年月のうちに傷んでくるんですよ。この鳥居も、下の方が弱くなって危なくなってきたから、私のところに修理の依頼が来たというわけです。

この神社は石段を何百段も登った上にあってね、こんなに太い材木や大工道具を運ぶのも大変でした。それに、ちょうど季節が夏の盛りでね、作業してると蚊やらブトやらがいっぱい群がってくるんですよ。腰に蚊取り線香をぶら下げて何とか作業したけど、平地で住宅を建てるのとは全然違う苦労がありますね。

鳥居の上の方は傷んでないから、元からある柱の上の方をそのまま残して、そこにぴったり合うように柱の下半分を作り直しました。こういう作業は工場であらかじめ加工した材木を現地で組めばおしまい、っていうわけにはいきませんよ。蚊やブトがいっぱいいる現地に行って、雨が降ってくれば雨に濡れながら、現物に合わせて細かな調整をして、ぱっと見ただけでは途中で接いであるのが分からないくらい自然につなげなきゃね。こういうところは大工の腕の見せ所ですよ。

 

この鳥居もそうだけど、木造建築のいい所は「後で直せる」ことです。現代の感覚だと「後で直す必要がないくらいに丈夫に作ればいいじゃないか」と思うかもしれないけど、工業製品とは違って、建築ははるかに長持ちさせないといけません。法隆寺なんて建ててから1300年もああして立派に立ってるけど、その時々の必要に応じて修理を重ねてきたからなんですよ。

始めから1300年メンテナンス不要で長持ちするものなんて人間には絶対作れないけれど、後で直せる設計にさえなっていれば、直しながら1300年持たせることができる。それが木造建築の素晴らしいところです。

一般の住宅の場合は、修理ができるだけじゃなくて、間取りを変えるようなリフォームができることも大事ですよ。子供が生まれたから子ども部屋を増築しよう、子どもたちが大きくなってきたから子ども部屋を2つに仕切ろう、子どもたちが巣立ったから老後の生活に備えてバリアフリー化しよう。そんなふうに、人生の折々で一番住みやすいように手を加えていく。それが木造住宅、特に日本の気候風土に一番合ってる在来の「木造軸組み工法」なら簡単にできるんです。

それがね、鉄筋コンクリート造りとか、木造とは言っても「パネル工法」とかだと、なかなかそうはいきませんよ。彼らは「地震にはものすごく強い」って宣伝していて、確かにそれはそうなんだけど。「後で間取りが変えられない」っていうことを、建てる前にお客さんにちゃんと説明して納得してもらってるんでしょうかね?

家は「建てたらそれでおしまい」にはなりません。後で後悔することがないように、先々のことまでよく考えましょう。それにはまず、先々のことまでちゃんと説明してくれる良心的な施工会社を選ぶことが大事ですね。

(有)大桃工務店 代表取締役 棟梁 大桃実

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